最近、以下の記事を見つけたので、各社の大阪リージョン対応を調べて見る。
関西へのDR(Disaster Recovery)サイトの作成
エンタープライズのアーキテクチャーを作っていると、東京のお客さんは大阪へ DRサイトを作る事がある。
ただし 400 km も離れているため、データのリアルタイム同期は不可能で、夜間バックアップで差分データをバッチ処理で移動させ、万が一の時に大阪側を立ちあげる、アクティブ-スタンバイ構成が取る事になる。
東京の全てのバックアップを大阪に作るのは難しいので、一部のクリティカル業務だけは、大阪で一日遅れのバックアップ(前日のバッチ処理の)で立ちあげるという設計をしたことがあったかもしれない・・・コア業務を東京と大阪に分散し、相互にバックアップ体制を組めば被害は最小限になるが、それもそれで運用が混乱しそうなので、あまり提案したくない気も・・・
クラウドサービス別、大阪(関西)リージョン開設の経緯
- AWS
2018年2月 大阪リージョン開設。ただし、こちらの記事にあるようにバックアップ目的であり、申請が必要なものだった。
AZとしても1つ。サービスとしては、EC2/S3/RDS/EBS が提供されていた(当時の記事による)
現在の大阪リージョンのサービスはリージョン表 で確認できる。もちろん差はかなりあるが、AWSのサービスが多いためだと思う。
2021年初頭 3つのAZを持った形で全てのユーザーが使えるように公開予定。参考記事
- Azure
2014年2月 Azureは、国内サービスの開設当初から東日本(埼玉)と西日本(大阪)を同時に開設している(参考記事)。
Azureの場合は、古くから西日本(大阪)が開設されていたので、当初から遅延がどのくらいかという実験の記事がネット上にちらほらしていた。
こちらの2017年に測定をしている結果によると Azureのバックボーン間だと 10 msec 程度の遅延のようだ。(開設当初から10msec このくらいだ。と言われていた記憶がある。日本のインターネット環境はそもそも良いのでこの値はそんなに変わらないだろう)
現在の東日本リージョンのサービスは、リージョン別の利用可能な製品 から辿れる。一覧性がないので俯瞰するのが大変だが、東西のサービスで差はあるが、それほど大きくない印象。
- GCP
2019年5月 大阪リージョンを開始。Azure と同様に、一般ユーザーも申請無しに使える普通のリージョンとして開設。ゾーンも3つで開始。「3ゾーン、2エッジPOP、3専用接続POP」とある(こちらの記事)。2エッジがもしユーザーが使用するAPI エンドポイントの POPを表しているのであれば、実態としては2重化という事にみえる(否定的な意味では無く、それで十分だと思う)。
現在の大阪リージョンのサービスは、ロケーション別のプロダクト提供状況 で確認できる。現時点で Cloud Functions が大阪にないなど、若干の差はある。基本的には同一と言っても良いレベルだと思う。
- IBM Cloud
現時点では、大阪にリージョンを作るまでは行ってない。一方で西日本ユーザーの低遅延化に対応するために、ネットワークの接続ポイントを 2019年6月に開設している。
基本的に東京に3リージョンあるので、その中で可用性を保つ事はできるが、DRとまでは行かない 。
個人的には、DRにも災害規模に応じた、何段階かのレベルが有って良いと思っているので、物理的に10km くらい離れていればミニDRとして十分機能すると言っていいのでは。と思う。むしろデータの同期が早いなどメリットも出てくると思う。
- Oracle Cloud
2020年2月 大阪リージョンを開設。但し Oracle の場合は東京も大阪も、可用性ドメイン(AWS で言う所の AZ) が1つづつになっている(リージョンと可用性ドメイン) 。
可用性ドメインレベルの障害 = DCレベルの障害は、現実的には発生しないと思われていたが、2019年8月に起きた AWS の大規模障害を受けて、一つの AZに頼る構成は問題だという意識は出てきている気はする。
個人的にはこれらの障害は可視化されるようになっただけで、昔から起きていたのでは無いか。という気もする。単一企業のWebサイトレベルの障害として、報道されているものが、実はDC毎アクセスできなくなっていた障害だった。という事を実際に見かけた事があるので・・・
大阪リージョンのサービスは、恐らく プラットフォームおよびインフラストラクチャ・サービスのデータ・リージョン に載ってくると思うが、記事を書いている時点で「Japan East(Tokyo)」以外の記述が無い。
メモ
AWS/GCP は「大阪」という言い方をしているが、Azure に関しては「西日本」という言い方をしている。これは、Azure の最初のデータセンターが埼玉に開設され「東日本」と言いはじめたためだと思われる。
Azure は現在、東京と埼玉にリージョンを持っている。
現実的な問題として一般的に DRサイトとしては、データ転送時間(これは日々の運用の自由度にも関わってくるはず)も考えると、「西日本/大阪」にこだわらず、東京/埼玉で DRを組んでも良い気がする。
が、311の様な関東全域が電源的に壊滅の危機に陥った前例もあるわけで、電源の供給地域を分離するレベルで災害を考えたり、予測される首都直下型地震まで対応しようとするのであれば、DRを作るのであれば大阪という選択肢も出てくるだろう。